2022/03/07 7:41 JST投稿
【今週の見通し】(3月7日-3月11日)
先週も引き続きウクライナ情勢の懸念が続いている。この地政学リスクの高まりから、リスクオフの姿勢が優勢だった。もともとロシアの経済状況は厳しく、長期化すればするほど世界から孤立し、さまざまな面での負荷が大きいことから、いずれ停戦にむけた動きも出てくるものと思われる。ロシアに対しては米欧日を中心に経済制裁を行なっており、5日に米カード最大手のビザと2位のマスターカードは、ロシアでのカード決済事業の停止を発表するなど、厳しい状況が続いている。
また、3月2日、3日のパウエル議長の議会証言で、3月のFOMCでの利上げを示唆した。しかし、足元では、ウクライナ情勢の悪化からエネルギー関連や商品が値上がりしており、当面リスクオフの姿勢は続くだろう。今週は、10日に発表される2月米消費者物価指数に注目したい。
予想レートは米ドル・円が113円前半から116円半ば。ユーロ・米ドルが1.10ドル前半から1.10ドル後半。
【米国】
米ドル円(USDJPY) 114.84-114.85 (円)
ユーロ円(EURJPY) 125.62-125.63 (円)
ユーロ米ドル(EURUSD) 1.0937-1.0938 (米ドル)
ポンド円(GBPJPY) 152.05-152.08 (円)
ポンド米ドル(GBPUSD) 1.3239-1.3242 (米ドル)
3月4日のニューヨーク外国為替市場の主なトピックスは、ロシア軍がウクライナ南東部にある欧州最大規模のザポリージャ原子力発電所を制圧したが、幸いなことに米エネルギー省当局者はロシアが原子炉を攻撃した証拠を確認していないと述べている。
また、ドイツのショルツ首相は、ロシアのプーチン大統領と電話会談を行なった。ショルツ首相が全ての軍事行動を直ちに停止するよう求めたところ、プーチン大統領は今週末にウクライナと3回目の停戦交渉を開くと表明した。地政学リスクが意識され、債券が買われ長期金利が一時1.709%に低下した。
ロシアによる軍事攻撃が強まる中で、天然ガスや原油、商品先物価格が上昇している。近隣の欧州各国に与える影響が大きく、ユーロ圏のインフレと景気悪化が同時に進行するスタグフレーションへの懸念も続いている。
朝方、発表された2月非農業部門雇用者数(前月比、結果:67.8万人、予想:40.0万人、前回:46.7万人)は、昨年7月以来の大幅な伸びを記録し堅調な労働市場を示した。2月失業率(前回:3.8%、予想:3.9%、前回:4.0%)と予想、前回の数字を下回ったが、2月平均時給(前年同月比、前回:5.1%、予想:5.8%、前回:5.7%)の伸びが減速しており、インフレ圧力がやや落ち着いた状態になったことを示した。
ユーロ・米ドル(EURUSD)は、1.10ドル半ばから1.08ドル後半に値を下げた。地政学リスクが意識され、全面、米ドル買いが優勢となり2020年5月以来の安値1.0886ドルまでユーロが売られた。大幅に売られた反動から、小幅に値を戻し終値は1.0928ドルとなった。
ユーロ・円(EURJPY)は、127円後半から115円半ばに値を下げた。地政学リスクの長期化や欧州経済の悪化が、懸念され2020年12月以来の安値125.07円に値を下げた。その後は、狭い値幅ながら激しい値動きとなり125.55円で終えた。
米ドル・円(USDJPY)は、115円半ばから114円後半に値を下げた。ウクライナ情勢の懸念から安全資産の円買いが優勢となった。長期金利の低下も影響が大きく2月24日以来の安値114.65円まで売られた。雇用統計は良好な結果だったが、ウクライナ情勢への懸念がかなり強く影響は軽微だった。終値は114.82円となっている。
NYダウ平均 USD 33,614.80 -179.86 (-0.53%)
NASDAQ総合 USD 13,313.438 -224.503 (-1.65%)
S&P500 USD 4,328.87 -34.62(-0.79%)
3月4日の米株式市場のダウ工業株30種平均は、前日の終値を2日連続で下回った。ロシアによる軍事攻撃か激化し地政学リスクが意識され、景気敏感株や消費関連株が売られた。その一方で、景気動向に左右されにくいディフェンシブ株(生活必需品である食品や医薬品、社会インフラの電力・ガス、鉄道、通信など)が買われたことが支えとなった。債券が買われ、長期金利が大幅に低下し、金融株が売られたことも影響が大きかった。
米国債10年 1.732(-0.112%)
NY原油(WTI) 1バレル=USD 115.68 +8.01(+7.44%)(4月渡し)
NY金(COMEX) 1オンス=USD 1,966.6 +30.70(+1.59%)(4月渡し)
【日本】リスクオフの円、米ドル買いが優勢
3月4日の東京外国為替市場は、ロシア軍がウクライナ南東部にある欧州最大級のザポロジエ原子力発電所で火災が発生したことを受け、リスク回避のリスクオンの姿勢が強まった。その後、原子炉への影響がないことが判明すると、リスクオンの状態が和らいだ。
米ドル・円は115円半ばで取引された。地政学リスクを受けたリスクオフの円買いが強まると、この日の安値115.26円まで売られた。その後、ウクライナ情勢の懸念が和らぐとドル買いに転じた。リスクオフの円買いと米ドル買いが交互に続いた影響から、大きな値動きに繋がりにくかった。17時時点では115.45円で取引された。
ユーロ・円は、127円後半から126円後半に値を落とした。ウクライナの原発火災を受けリスクオフの円買いが強まり、昨年2月以来の127円を割り込み126.93円まで売られた。その後、原子炉に影響がないことが判明すると少し回復し、小幅な下落にとどまり17時時点では127.14円となった。
ユーロ・米ドルは1.11ドル前半から1.10ドル後半に値を下げた。ユーロ・円の動きとほぼ同様の動きをたどった。リスク回避の米ドル買いの流れが中心となり、2020年5月以来となる1.1000ドル付近の1.1009ドルまでユーロが売られた。17時時点では1.1012ドルだった。
日経平均株価 25,985.47円 -591.80(-2.23%)
安値25,774.28円 - 高値 26,421.85円
東証出来高 1,529,25万株
東証売買代金 3兆6277.16億円
3月4日の日経平均株価は前日の終値を下回った。ウクライナ情勢への懸念からリスク回避の売りが優勢となった。特にロシアや欧州での生産や部品供給で深いかかわりを持つ自動車メーカー株や、欧州売上比率の高いガラスメーカーなどを中心とした輸出関連株が値を下げた。終日で前日の終値を日賜り、東証1部の88%の銘柄で値を上げている。
無担保コール翌日物金利 -0.009%
国債先物・22年3月限 150.89(+0.08)
10年長期金利 0.150%(-0.015)
【マーケットアナリティクス】ユーロ・米ドルは米雇用統計後に1.09ドルを割り込む(3月4日)
リスクを回避するリスクオフの流れが安全資産である米ドルに有利に働き、トレーダーは金曜日に米ドルを買い続けた。
米国セッション中、ユーロ・米ドル(EURUSD)は1.5%下落し、2020年5月以来の1.09ドル台を下回る取引となった。
ウクライナの戦争は連日、ニュースのトップを占めている。しかし、投資家は本日の米労働市場データにも注目した。
米国非農業部門雇用者数によると、2月に67.8万人の雇用を創出し、予想の40万人を大きく上回った。さらに、失業率も予想以上に改善し、4.0%から3.8%に低下した。一方、賃金の伸びは年率、月次ともに顕著に鈍化した。
1.087ドル付近の次の下値支持線(サポート)が間もなく試される可能性がある。この水準が保たれない場合、ユーロはコロナウイルス感染拡大によるロックダウン後の安値に向かうため、1.075ドルまで下落する可能性がある。ウクライナ紛争がすぐに改善されない場合、継続的な米ドル買いが続くだろう。
一方、短期的な観点から安定するためには、1.10ドルを上回って上昇する必要がある。次の重要な上値抵抗線(レジスタンス)は1.11-1.1180ドル台になる可能性がある。
ユーロ・米ドル、デイリーチャート 3月4日(CET・中央ヨーロッパ時間)
引用元: “EURUSD Drops Below 1.09 After US Payrolls” (2022年3月4日, AXIORY Global Market News)
追記:3月7日、日本時間6:03のユーロ・米ドルは1.0937-1.0938ドルで取引されている