ECB議事録や高官発言からユーロ買い強まる

2022/05/20 7:24 JST投稿
 
 

【米国】

為替(5月20日6時00分)
 米ドル円(USDJPY)    127.78-127.81 (円)
 ユーロ円(EURJPY)    135.23-135.40 (円)
 ユーロ米ドル(EURUSD) 1.0582-1.0586 (米ドル)
 ポンド円(GBPJPY)    159.30-159.43 (円)
 ポンド米ドル(GBPUSD) 1.2466-1.2472 (米ドル)
 
5月19日のニューヨーク外国為替市場に影響を与えた出来事は、朝方に発表した5月 フィラデルフィア連銀製造業景気指数(結果:2.6、予想:16.0、前回:17.6)が、予想外に大幅に低下した。また、同時刻に発表された前週分の新規失業保険申請件数(結果:21.8万件、予想:20.0万件、前回:20.3万件)では、予想外に増加し4カ月ぶりの高水準となった。前週分 失業保険継続受給者数(結果:131.7万人、予想:132.0万人、前回:134.3万人)では、1969年12月以来の低水準となり、人手不足ながら労働市場の引き締まりが観測された。これらの結果を受け、長期金利が2.772%に低下した。
 
さらに、欧州中央銀行(ECB)が4月13、14日の政策委員会会合の議事録を公開した。中期的な物価安定を達成するという政策委員会の決意を示すため、遅滞なく行動することが重要だとの認識を一部の委員が示したことが明らかとなった。7月の利上げ観測が強まりユーロが買われている。また、デギンドス欧州中央銀行(ECB)副総裁が講演で、量的緩和策である資産購入プログラム(APP)を今年の第3四半期(7-9月)の早い時期に終了することを支持していると明言した。
 
米ドル・円(USDJPY)は、朝方に発表された弱い経済指標から長期金利が低下すると、4月27日以来の安値127.03円を付けた。その後、徐々に買戻しが入り、長期金利が2.848%に持ち直したことが支えとなり127.79円で終えた。
 
ユーロ・米ドル(EURUSD)は、弱い米経済指標やECB議事録やECB高官の発言を受けユーロ買いが活発になった。前日の高値1.0564ドルを超え、1.0607ドルまで上昇した。その後は、利益確定に向けた売りが入り小幅に値を下げ、終値は1.0588ドルとなった。
 
ユーロ・円(EURJPY)も、ECB議事録やECB高官の発言を受けユーロ買いが優勢となり、135.43円まで値を上げた。その後は、小幅に値を下げ終値は135.30円だった。
 
株式
 NYダウ平均  USD 31,253.13 -236.94 (-0.75%)
 NASDAQ総合  USD 11,388.496  -29.658 (-0.25%)
 S&P500      USD  3,900.79  -22.89(-0.58%) 
 
5月19日の米株式市場のダウ工業株30種平均は連日で前日の終値を下回り、年初来安値を更新した。小売業界の低調な決算から、高インフレが企業業績に与える影響の大きさが懸念され、リスク回避の姿勢が強まった。消費関連株中心に売りが拡がり、3指数揃って値を下げた。
 
債券
 米国債10年 2.837%(-0.047)
 
商品
 NY原油(WTI) 1バレル=USD 112.21 +2.85(+2.39%)(6月渡し)
 NY金(COMEX) 1オンス=USD 1,841.2  +25.30(+1.39%)(6月渡し)
 
 

【日本】決済需要から持ち直すもリスク回避の姿勢強まる

為替(17時)
5月19日の東京外国為替市場の主なトピックスは、前日の米長期金利の低下を受け、朝方は値を下げる場面があった。しかし、米長期金利の上昇や国内輸入企業の決済に向けた需要から持ち直した。
 
米ドル・円は、朝方に127.90円まで米ドルが売られたが、米国の時間外の金利上昇や決済に向けた米ドル買いが入り、この日の高値128.95円まで値を戻した。その後は、リスク回避の姿勢が強まり再び下げに転じ、17時時点では128.23円となった。
 
ユーロ・米ドルは、朝方は米ドル・円の下落を受け小幅に値を上げた。地政学リスクが意識され小幅な動きにとどまっている。欧州勢が参加すると、リスク回避の姿勢が強まり再び下げに転じ、
17時時点では1.0492ドルで取引されている。
 
ユーロ・円は、朝方は米ドル・円の下落に引きずられ、この日の安値133.95円まで値を下げたが、国内輸入企業の決済に向けたユーロ買いが入り、この日の高値135.46円まで値を戻した。その後は、リスク回避の姿勢の強まりから値を下げ17時時点では134.53円だった。
 
債券
 国債先物・22年6月限  149.60(+0.08)
 10年長期金利  0.240%(変化なし)
 
 

【マーケットアナリティクス】米ドル円、巨大なヘッドアンドショルダーズパターンを記録(5月19日)

米ドル円は米国時間に向け市場の下落ムードは木曜日も続いており、0.4%安となり127.00円の重要な下値支持線(サポート)への再挑戦につながりそうだ。
 
■弱気(ベア)が猛威を振るう
水曜日、大手小売業のターゲット、ウォルマート、TJXカンパニーの弱い決算が、弱まっていた市場にダメージを与え米国株は下落した。決算報告で3社はいずれも、アメリカの消費者の現状とインフレの上昇に懸念を示している。
 
ターゲットの会長兼CEOであるブライアン・コーネル氏はヤフーファイナンスに、「我々は、現在の運賃や輸送費の上昇を予想していなかった」と語った。
 
市場は、主要な中央銀行がインフレ抑制のためにより積極的に取り組むことが、世界の成長を阻害するのではないかとの懸念を強めている。さらに、中国のコロナウイルス感染拡大を受けた都市封鎖とロシア・ウクライナ紛争が景気後退懸念を煽っている。
 
株の弱気心理は、FX市場のリスクバロメーターである米ドル・円を直撃し、100ピップス以上急落し、長期上昇トレンドがまもなく終わりを見せる模様だ。
 
■米ドル・円は反転構造を形成
米ドル・円は現在、完璧なヘッドアンドショルダーパターン(※)を形成しており、この場合、弱気の反転形成となる。このパターンのネックライン、つまり重要なサポートは127.00円(赤の水平線)に位置している。
 
米ドルがこのレベルを下回ると、このフォーメーションは確定し、有効となる可能性があります。その可能性はおよそ400ピップスだ。よって、弱気は中期的に123.00円台をターゲットにしている可能性がある。
 
一方、米ドルが買い戻された場合、短期トレンドを強気に転換するには129円を超える必要がある。
 
これから発表される経済指標の新規失業保険申請件数が労働市場の改善を示すと予想されている。また、同時刻に発表される5月のフィラデルフィア連銀製造業景気指数でも労働市場が示されると予想されている。
 
(※)ヘッドアンドショルダーパターン:チャート上で相場の天井を迎えたことを示唆するパターン。三つの山と二つの谷で形成され、二つの山に挟まれた真ん中の山が相場の天井(高値)を示している。ダブルフォーメーションより出現頻度が少なく、高確率でトレンドが転換される状況が示される。
 
チャートが形成される現象としては、まず、最初の山(ショルダー)を形成後、値を下げ谷ができた後に高値を付け山(ヘッド)ができる。さらに売りに転じ再び谷ができた後、値を上げ山(ショルダー)を形成した後、さらに下落に転じる。最初の山から反転する地点を下回るところが上昇トレンドの終わりを告げ、売りシグナルに転じるパターンを指す。
    
米ドル・円デイリーチャート 5月19日(CET・中央ヨーロッパ時間)
 
引用元: “USDJPY Posts Massive Head and Shoulders Pattern” (2022年5月19日, AXIORY Global Market News)         
 
追記:5月20日、日本時間6:00の米ドル・円は127.78-127.81円で取引されている

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アナリストプロフィール

Noriko Sasaki

投資運用歴25年。日系銀行、シティバンク、日興シティ信託銀行の勤務や、ITベンチャー企業でのIR・広報などを経て、金融に強みを持つライターとして活躍。
これまでのキャリアで培った金融の知識と、企業経営の視点、ニュースを複合的に織り交ぜたマーケット分析を得意とする。


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