2022/10/17 6:48 JST投稿
【今週の見通し】(10月17日-10月23日)
先週は、9月米消費者物価指数および9月米消費者物価コア指数の予想を上回る結果から、さらなる利上げ観測が強まりじわじわと米ドルが対円で上昇した。10月ミシガン大消費者信頼感指数の良好な結果からさらに値を上げ、1990年8月以来、約32年2カ月ぶりの高値となる148.87円を付けている。
今週は、10月19日に公表される米地区連銀経済報告(ベージュブック)に景気後退に関する記載が増加した場合は、下落が強まるだろう。一方で、米の大幅な利上げ観測が強まる中で、米ドルは149円に挑む模様だ。さらに、日本の円買い介入への懸念もあり上方、下方ともに注意を払う必要がある。
また、10月16日から5年に1度の中国共産党大会が始まった。今回、習近平氏は、異例の3期目続投を掲げている。3期目続投が決まりそうだが、コロナウイルスの都市封鎖の影響から元安が続いており注目が高まっている。
主なスケジュール
10月17日(月):鉱工業生産(8月)、ニューヨーク連銀製造業景気指数(10月)
10月18日(火):IoT展示会「CEATEC」開幕(21日まで)、中・鉱工業生産指数(9月)、中・小売売上高(9月)、中・固定資産投資(都市部、9月)、独ZEW期待指数(10月)、米鉱工業生産指数(9月)、NAHB住宅市場指数(10月)、ミネアポリス連銀総裁討論会に参加
10月19日(水):中・新築住宅価格(9月)、英消費者物価コア指数(9月)、ユーロ圏CPI(9月)、米住宅着工件数(9月)、米地区連銀経済報告(ベージュブック)公表、シカゴ連銀総裁講演
10月20日(木):貿易収支(9月)、中国・1年物/5年物ローンプライムレート(LPR)、米中古住宅販売件数(9月)
10月21日(金):消費者物価コア指数(9月)、英小売売上高指数(9月)、ユーロ圏消費者信頼感指数(10月)、ニューヨーク連銀総裁イベント開会あいさつ
予想レートは米ドル・円が146円後半から151円前半。ユーロ・米ドルが0.95ドル前半から1.00ドル前半。
【米国】
為替(10月17日6時08分)
米ドル円(USDJPY) 148.59-148.64 (円)
ユーロ円(EURJPY) 144.48-144.54 (円)
ユーロ米ドル(EURUSD) 0.9723-0.9726 (米ドル)
ポンド円(GBPJPY) 166.63-166.77 (円)
ポンド米ドル(GBPUSD) 1.1211-1.1221 (米ドル)
10月14日のニューヨーク外国為替市場に影響を与えた大きな出来事は、2つあった。1つは、トラス英首相がクワーテング財務相を解任し、さらに法人減税を撤回表明した。もう1つは、10月ミシガン大消費者信頼感指数と米連邦準備制度理事会(FRB)がインフレ期待動向を判断する上で注目している同指数の期待インフレ率速報値が短中期とも予想を上回ったことだ。
まず、トラス英首相は就任直後に経済対策を打ち出し、市場が混乱していた責任からクワーテング財務相を解任し、後任にジェレミー・ハント元外相を任命した。クワーテング氏はトラス氏の長年の盟友で、2010年にともに下院議員に初当選した同期だった。自身の責任を盟友に転嫁し、その記者会見をわずか8分で終える異常な事態は、今後のかじ取りの厳しさを示したと言える。市場では債務の軽減を示したことでポンド買いが強まり1.1288ドルとなったが、金融市場の沈静化は厳しいとの見方から一転して1.1152ドルまで値を下げ、1.117ドルで終えている。
続いて、10月ミシガン大消費者信頼感指数(速報値、結果:59.8、予想:58.9、前回:58.6)は、先月より4ヵ月ぶりに上昇し、順調な改善が見られた。一方で、1年先のインフレ期待は先月の4.7%から5.1%に上昇。5年先のインフレ期待が先月の2.7%から2.9%に上昇した。この結果を受け、長期金利が4.031%上昇した。
金融政策の影響を受けやすい2年債と10年債(長期金利)の利回りは、71日連続で逆転(逆イールド)しており、終値ベースでは2年債が4.496%、10年債が4.022%だった。
また、ロシアのプーチン大統領が訪問先のカザフスタンにて会見し、ウクライナに対するミサイル攻撃を当面実施しないと述べた。一方で、英スカイニューズが「ロシアは特に長距離ミサイルの弾薬を急速に使い果たしている」との西側当局者の分析を紹介した。また、ウクライナのレズニコフ国防相は、ツイッターでロシア軍が保有しているとされるミサイルのうち、既に3分の2を使い果たしたと主張している。
米ドル・円(USDJPY)では、朝方に英トラス政権の混乱から英国債が売られた流れにつられ米長期金利が3.85%に低下し、米ドル買いが鈍化した。その後は、ミシガン大消費者信頼感指数とその期待インフレ率が上昇すると長期金利が上昇し、一転して米ドルが買われ1990年8月以来、約32年2ヵ月ぶりの高値148.87円まで急激に値を伸ばした。その後、小幅に値を下げるも堅調で終値は148.67円となった。
ユーロ・米ドル(EURUSD)は、プーチン大統領の発言から投資家心理が上向き、ユーロ買いが強まった。東京時間に付けた高値0.9808ドルが意識されると伸び悩み、0.9800ドルまでの上昇となった。その後は、米経済指標の上昇から米ドルが買われると値を下げ、この日の安値0.9708ドルに値を下げるも買戻しが入り0.9768ドルに値を上げた。しかし、再び値を下げ終値は0.9722ドルとなった。
ユーロ・円(EURJPY)では、朝方はプーチン大統領のハト派的な発言から投資家心理が上向いたが、米ドル・円の動きにつられるとこの日の安値143.48円を付けた。反動で上昇するも値を下げたが、再び買い戻され高値144.84円まで上昇した。その後、小刻みな動きとなり144.62円で終えた。
株式
NYダウ平均 USD 29,634.83 -403.89(-1.34%)
NASDAQ総合 USD 10,321.388 -327.764 (-3.07%)
S&P500 USD 3,583.07 -86.84(-2.36%)
10月14日の米株式市場のダウ工業株30種平均は前日の終値を下回った。朝方は、プーチン大統領のウクライナに関する発言や英トラス政権の法人減税の撤回を受け、投資家心理が上向き買いが優勢となった。その後、10月ミシガン大消費者信頼感指数や期待インフレ率が予想を上回るとFRBの大幅利上げ観測がさらに強まり、長期金利の上昇を受け幅広い銘柄に売りが拡がった。前日に大幅に上昇した反動から利益確定売りが出たことも影響している。
債券
米国債10年 4.022%(+0.068)
商品
NY原油(WTI) 1バレル=USD 85.61 -3.50(-3.93%)(11月渡し)
NY金(COMEX) 1オンス=USD 1,648.90 -28.10(-1.68%)(12月渡し)
【日本】日米金利差が意識され、堅調に推移
為替(17時)
10月14日の東京外国為替市場では、前日に発表された9月米消費者物価指数が予想を上回り、米国でさらなる利上げ観測が強まり、米ドル高が続いている。
前日のニューヨーク市場で1990年8月以来、32年2カ月ぶりの高値146.67円を付け、鈴木財務相や黒田日銀総裁の発言に注目が集まった。まず、鈴木財務相は「投機による過度な変動は容認できない」「過度な変動には適切な対応を取りたい」「前回の為替介入は米国から理解を明確に示していただいた」と述べた。続いて、黒田総裁は、「G20(主要20カ国財務相・中央銀行総裁会議)では日本の物価動向や政策対応について説明した」と述べている。
なお、ウクライナ侵攻を実施したロシアへの対応をめぐる立場の違いから、4月、7月の会合に続き、3回連続で共同声明を取りまとめることができなかった。
米ドル・円は、大きな動きは出なかったものの日米金利差が意識され堅調に147円台で推移した。前日のニューヨーク市場で付けた32年ぶりの高値が上値抵抗線(レジスタンス)として意識され、上昇が限定的となり高値は147.61円となった。その後は、日本政府の円買い介入への警戒が意識され、17時時点では147.48円となった。
ユーロ・米ドルは、朝方は決済に向けた買いが入り0.9808ドルまで上昇したが、リスク回避の米ドル買いに転じた。徐々に値を下げ、17時時点では0.9767ドルだった。
ユーロ・円は、朝方は決済に向けたユーロ買いが入り144.42円まで値を上げた。その後は、ほぼ横ばいで推移したが、徐々にリスク回避の円買いが強まり17時時点では144.05円で取引されている。
債券
国債先物・22年12月限 148.33 (-0.02)
10年長期金利 0.245%(変化なし)