長期金利上昇から米ドルは値を戻す

2022/06/01 7:36 JST投稿
 
 

【米国】

為替(6月1日6時00分)
 米ドル円(USDJPY)    128.60-128.71 (円)
 ユーロ円(EURJPY)    138.02-138.14 (円)
 ユーロ米ドル(EURUSD) 1.0731-1.0737 (米ドル)
 ポンド円(GBPJPY)    162.04-162.21 (円)
 ポンド米ドル(GBPUSD) 1.2599-1.2607 (米ドル)
 
5月31日のニューヨーク外国為替市場では、連休明けに長期金利が上昇した。影響を及ぼした出来事は、前日にミシェル欧州連合(EU)大統領がEU首脳でロシア産原油の一部禁輸で合意したと明らかにしたことも一因だ。ロシアからEUへの海上経由で輸送される原油・石油製品の購入を禁じる内容となったが、パイプラインからの輸入禁止には及んでいない。
 
これに加え、石油輸出国機構(OPEC)プラスがロシアを一時的に除外する可能性があると米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が伝えた影響も大きかった。ウクライナ戦争後もOPECプラスの増産ペースに影響がなかったのはロシアの主導によるもので、一時的にロシアが除外されるとサウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)が増産しやすくなるとみられ、原油価格が高騰している。
 
また、バイデン大統領がホワイトハウスでパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長と会談を行なった。バイデン大統領は、引き続きFRBの独立性を尊重すると述べた。背景には11月の中間選挙を控え高インフレが人々の生活を脅かしていることから金融政策に配慮していることを示す狙いがある。これらの影響から長期金利が上昇した。
 
朝方発表された5月 米消費者信頼感指数(結果:106.4、予想:103.9、前回:107.3)は、2月以来の低水準となり、高インフレの影響が及んでいることを示した。S&Pダウ・ジョーンズ・インディシーズが発表したケースシラー住宅価格(前年比、結果:21.17%、予想:19.7%、前回:20.2%)では資材価格の上昇を受け、中古住宅市場が活況となり過去最高の伸び率を記録した。さらに、5月米ダラス連銀製造業活動指数(結果:-7.3、予想:1.5、前回:1.1)では、予想を大幅に下回った。
 
米ドル・円(USDJPY)は、バイデン大統領とパウエル議長の会談などから長期金利が2.884%に上昇した。さらに、5月 米消費者信頼感指数、ケースシラー住宅価格の上昇を受け米ドル買いが強まり、この日の高値128.89円を付けた。しかし、5月米ダラス連銀製造業活動指数が大幅に予想を下回ると徐々に値を下げ、終値は128.67円となった。
 
ユーロ・米ドル(EURUSD)は、欧州時間に発表された5月ユーロ圏消費者物価指数(HICP、速報値、結果:8.1%、予想:7.8%、前回:7.5%)が予想を上回り、高インフレによる欧州の景気減速懸念の強まりから朝方にユーロが売られ、この日の安値1.0679ドルを付けた。米長期金利上昇による米ドル買いも影響が大きかった。月末の金の価格決定に絡むロンドンフィキシングに絡んだユーロ買いがプラスとなり、値を戻した。ECB高官の発言に左右される場面もあったが、大きな動きにはつながらず、終値は1.0734ドルとなった。
 
なお、欧州中央銀行(ECB)理事会メンバーの発言では、カジミール・スロバキア中銀総裁がECBの利上げ幅に言及した。「7月に0.25%、9月は0.50%になる可能性がある」と述べた。また、ビスコ・イタリア中銀総裁は、ECBは利上げを緩やかに進めるべきとの見解を示した。さらに、デコス・スペイン中銀総裁は景気動向や地政学リスクを踏まえ、ECBは特定の金利の道筋に事前にコミットするべきではないとの見解を示している。
 
ユーロ・円(EURJPY)は、朝方は経済指標から景気減速の懸念が高まり、この日の安値136.81円まで売られた。その後は、米ドル・円やユーロ・米ドル上昇から買戻しが入り、この日の高値138.24円に値を戻し、終値は138.11円となった。
 
株式
 NYダウ平均  USD 32,990.12 -222.84 (-0.67%)
 NASDAQ総合  USD 12,081.391  -49.740 (-0.41%)
 S&P500      USD  4,132.15  -26.09(-0.62%) 
 
5月31日の米株式市場のダウ工業株30種平均は7日ぶりに前日の終値を下回った。原油先物価格の上昇により、高インフレの長期化懸念が高まり、投資家心理が冷え込み幅広い銘柄が売られた。景気動向に左右されにくいディフェンシブ株にまで売りが及んだ。長期金利の上昇や前週までの下落から大幅に値を上げた反動から、利益確定売りも優勢となり3指数揃って値を下げ終えた。
 
債券
 米国債10年 2.850%(+0.101)
 
商品
 NY原油(WTI) 1バレル=USD 114.67 -0.40(-0.35%)(7月渡し)
 NY金(COMEX) 1オンス=USD 1,848.4  -8.90(-0.48%)(8月渡し)
 
 

【日本】国内輸入企業の決済に向けた米ドル買い強まる

為替(17時)
5月31日の東京外国為替市場の主なトピックスは、米ドルを中心に月末の国内輸入企業の決済に向けた外貨買いが強まった。朝方に時間外の米長期金利が2.849%に上昇したこともプラスとなった。その後、17時前に米長期金利が2.799%に低下すると、一転して売りに転じている。
 
また、上海での都市封鎖解除に向け、景気回復への足掛かりとなることが好感されリスクを積極的に取る動きも強まった。
 
米ドル・円は、朝方は決済に向けた買いや長期金利の上昇から、この日の高値128.34円まで値を上げた。その後は、値を下げたが、再び米ドル買いが強まった。しかし、長期金利が低下すると、値を下げ17時時点では127.75円となった。
 
ユーロ・円は、朝方は決済に向けた買いが入り、この日の高値137.98円まで買われた。売りが一巡すると、欧州での景気減速懸念が強まり、徐々に値を下げ、この日の安値137.03円まで売られた。その後はわずかに値を戻し17時時点では137.15円で取引された。
 
ユーロ・米ドルは、朝方は米ドル・円で米ドル買いが強まると1.0742ドルまで値を下げた。その後は、米ドル買いが強まると値を戻したが、再び値を下げた。17時時点では1.0736ドルとなった。
 
債券
 国債先物・22年6月限  149.65(-0.26)
 10年長期金利  0.235%(+0.005)

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アナリストプロフィール

Noriko Sasaki

投資運用歴25年。日系銀行、シティバンク、日興シティ信託銀行の勤務や、ITベンチャー企業でのIR・広報などを経て、金融に強みを持つライターとして活躍。
これまでのキャリアで培った金融の知識と、企業経営の視点、ニュースを複合的に織り交ぜたマーケット分析を得意とする。


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