弱い米経済指標から長期金利が低下し米ドル売りに

2022/08/01 6:22 JST投稿

【今週の見通し】(8月1日-8月5日)
先週は、7月26、27日に行われた米連邦公開市場委員会(FOMC)では、2会合連続で0.75%の利上げが行われた。パウエル議長が今後は経済データ次第で会合毎に見極めると言及したことに加え、4-6月期の米実質国内総生産(GDP)が2四半期連続でマイナス成長となっている。その結果、米の利上げペースの鈍化観測が広がり長期金利が低下している。

今週は米ISM製造業景況指数、米雇用統計などの経済指標の発表が予定されている。特にISM製造業景況指数で景気悪化の節目50を下回った場合は、米ドルが売られる可能性が強い。また、今週は豪中銀と英中銀がそれぞれ政策金利を発表する予定で、今後の利上げペースにも注目が集まる。

主な金融スケジュール
8月1日(月):日・欧・米製造業PMI(7月)、中国・財新製造業PMI(7月)、米ISM製造業景況指数(7月)
8月2日(火):豪準備銀行(豪中央銀行)が政策金利発表、米JOLT求人件数(6月)、米セントルイス連銀総裁が講演
8月3日(水):日・欧・米サービス業PMI(7月)、中国・財新サービス業PMI(7月)、米ISM非製造業景況指数(7月)、「OPECプラス」閣僚級会合
8月4日(木):イングランド銀行(英中央銀行)が政策金利発表、米貿易収支(6月)、米クリーブランド連銀総裁が講演
8月5日(金):米雇用統計(7月)、米消費者信用残高(6月)など

予想レートは米ドル・円が132円前半から135円後半。ユーロ・米ドルが1.00ドル前半から1.03ドル半ば。

 

【米国】

為替(8月1日6時00分)
 米ドル円(USDJPY)    133.19-133.25 (円)
 ユーロ円(EURJPY)    136.21-136.30 (円)
 ユーロ米ドル(EURUSD) 1.0226-1.0227 (米ドル)
 ポンド円(GBPJPY)    162.27-162.40 (円)
 ポンド米ドル(GBPUSD) 1.2181-1.2187 (米ドル)

7月29日のニューヨーク外国為替市場で最も注目されたのは、この日に発表された経済指標だった。まず、6月米個人消費支出(PCE)デフレータ(結果:6.8%、予想:6.8%、前回:6.3%)、6月PCEコアデフレータ(前年比、結果:4.8%、予想:4.7%、前回:4.7%)共に前月よりも伸び率が加速した。数十年ぶりの高インフレで実質的な所得が減少し、需要が弱まっている状況が浮き彫りとなった。さらに、7月シカゴ購買部協会景気指数(PMI、結果:52.1、予想:55.2、前回:56.0)は予想を下回り、2020年6月以来の最低を記録した。また、7月ミシガン大学消費者信頼感指数調査の確報値(結果:51.5、予想:51.1、前回:51.1)は予想を上回った。1年期待インフレ率確報値は6月の5.3%から5.2%に鈍化した。5-10年期待インフレ率確報値は予想外に速報値の2.8%から2.9%に上昇したが、6月の3.1%から低下し、年初来で最も低い値となった。

2年債と10年債(長期金利)の利回りは、19日連続で逆転(逆イールド)している。終値ベースで2年債が2.891%、10年債が2.658%となった。

米ドル・円(USDJPY)では、欧州時間から徐々に値を上げ134.59円まで米ドルが買われた。その後は、弱い経済指標から長期金利が2.618%に低下すると、一転して米ドルが売られ徐々に低下し133.27円で終えた。

ユーロ・米ドル(EURUSD)では、朝方に米ドル・円で米ドル買いが優勢だった流れを受け、この日の安値1.0146ドルまで売られた。その後は米長期金利が低下し、徐々に値を戻し終値は1.0220ドルだった。

ユーロ・円(EURJPY)は、米ドル・円の動きにつられた。円が売られた影響を受け小幅に値を上げたが、円の買戻しが入ると徐々に値を下げ、終値は136.16円となった。

株式
 NYダウ平均  USD 32,845.13 +315.50 (+0.96%)
 NASDAQ総合  USD 12,390.688  +228.095 (+1.87%)
 S&P500      USD  4,130.29  +57.86(+1.42%) 

7月29日の米株式市場のダウ工業株30種平均は、前日の終値を3日連続で上回った。前日夕方に決算を発表したIT機器大手のアップルとネット通販のアマゾン(ナスダック)が好感され投資家心理が上向いた。また、前日に引き続きFRBが利上げのペースを縮小させるとの期待が広まり、幅広い銘柄が買われたことも大きかった。また、長期金利が一時2.618%に低下したことも支えとなり、3指数揃って値を上げ終えた。

債券
 米国債10年 2.658%(-0.023)

商品
 NY原油(WTI) 1バレル=USD 98.62 +2.20(+2.28%)(9月渡し)
 NY金(COMEX) 1オンス=USD 1,781.8  +12.60(+0.71%)(12月渡し)
 

【日本】低調な米GDPを受け、全般米ドル売りに

為替(17時)
7月29日の東京外国為替市場では、前日に発表された4-6月期の米国内総生産(GDP)が2四半期連続でマイナス成長となった影響から、FRBが利上げペースを鈍化させるとの懸念が強まった。これにより全般的に米ドル売りが優勢となった。

米ドル・円は、米国をはじめ世界的な景気減速懸念が強まり徐々に値を下げた。6月17日以来の安値を更新し、132.51円まで米ドルが売られた。その後は、時間外の米長期金利が2.65%台から徐々に上昇すると再び米ドルが買われ、17時時点では132.76円で取引されている。

ユーロ・米ドルは、米ドルが全般的に売られた影響からユーロが買われ徐々に値を上げた。欧州勢参加後に徐々に値を上げ、この日の高値1.0254ドルまで上昇したが、時間外の米長期金利が上昇し米ドルが買い戻されると小幅に値を下げ17時時点では1.0236ドルだった。

ユーロ・円は、米ドル・円で円買いが強まった影響を受け、ユーロが売られた。欧米に比べ景気後退が深刻な状況ではないことが好感されている影響も大きいと思われる。この日の安値135.65円まで値を下げたが、小幅に値を戻し17時時点では135.89円となった。

債券
 国債先物・22年9月限  150.51 (+0.26)
 10年長期金利  0.175%(-0.025) 
 

【マーケットアナリティクス】FRBとGDPの低下で円高に(7月29日)

米連邦準備理事会の利上げとポンドの悪化は、週後半の取引のスパイスになったことは間違いない。

意外なことに最も大きく動いたのは円であり、円は劇的に強くなった。これは、リスクオフモードと安全資産への逃避のためと思われる。しかし、同時に株や新興国通貨が上昇しており、腑に落ちない。

円の上昇は実に大きく、テクニカルな観点からも非常に興味深い。例えば、ポンド・円(GBPJPY)を例にとると、確かに売りシグナルが出ている。しかし、週の半ばには、その反対の買いシグナルに近づいていた。相場は対称的な三角形の上側のライン(オレンジ色)をほぼブレイクしたが、それはたまたま偽のブレイクアウトであり、実際にはより大きな売りにつながった。

この下落により、最終的にはフォーメーションの下限ラインをブレイクアウトし、売りのシグナルとなった。現在、7月初旬の安値(黄色)に達した後、価格はわずかに上昇中で、直近の下落の大きさを考えると非常に理解しやすい動きとなっている。おそらく青色エリアに向かって上昇し、局所的な上値抵抗線(レジスタンス)を試すと思われるが、主なシグナルは売りだ。
The Fed and a Lower GDP Strengthen the Yen

ポンド・円、デイリーチャート 7月29日(CET・中央ヨーロッパ時間)

引用元: “The Fed and a Lower GDP Strengthen the Yen” (2022年7月29日, AXIORY Global Market News)                            

追記:8月1日、日本時間6:00のポンド・円は162.27-162.40円で取引されている

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アナリストプロフィール

Noriko Sasaki

投資運用歴25年。日系銀行、シティバンク、日興シティ信託銀行の勤務や、ITベンチャー企業でのIR・広報などを経て、金融に強みを持つライターとして活躍。
これまでのキャリアで培った金融の知識と、企業経営の視点、ニュースを複合的に織り交ぜたマーケット分析を得意とする。


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