2022/10/03 7:04 JST投稿
【今週の見通し】(10月3日-10月9日)
9月22日に日本政府による対米ドルでの円買い介入が実施されたが、日米金利差やトラス英政権の大規模減税提案から米ドル買いが優勢となった。一方で、米連邦準備制度理事会(FRB)による金融引き締めから景気後退懸念が高合っている上、日本政府の再介入への懸念が高まり145円の壁は突破できずにいる。
欧州は秋の深まりとともにエネルギー需要が高まる中、ロシアからのエネルギー供給が不安定な上、エネルギー高が家計に与える影響が大きく厳しい状況だ。また、英国の金融政策に反した新政権の大型減税導入による財政への懸念も強まっており、欧州、英国では為替価格の変動が大きく不安定な状況が続いている。それに加え、ウクライナの地政学リスクが追い打ちをかけており、これらが複雑に絡み合い、当面は不安定な状況が続くだろう。
米ドルは144円台にとどまる状況が続いているが、今週発表される二つの経済指標に注目が高まる。一つは10月3日の米ISM製造業景況指数、もう一つは7日の米雇用統計だ。インフレ高止まりの観測が見られる場合は、11月の米連邦公開市場委員会での利上げ観測が強まり、米ドル買いが加速するだろう。
主なスケジュール
10月3日(月):日銀短観(7-9月)、金融政策決定会合における主な意見(9/21、22開催)、日・欧・製造業PMI(9月、改定値)、米ISM製造業景況指数(9月)
10月4日(火):岸田首相就任から1年、オーストラリア準備銀行(中央銀行)政策金利発表、米製造業受注(8月)、米JOLT求人件数(8月)
10月5日(水):日・欧・サービス業PMI(9月)、ニュージーランド中銀が政策金利を発表、ADP全米雇用報告(9月)、米ISM非製造業景況指数(9月)、石油輸出国機構(OPECプラス)閣僚級会合
10月6日(木):黒田日銀総裁が支店長会議で挨拶、ユーロ圏小売売上高(8月)、米新規失業保険申請件数(10/1終了週)
10月7日(金):毎月勤労統計(8月、速報値)、景気動向指数(8月)、家計調査(8月)、米雇用統計(9月)、米消費者信用残高(8月)
10月8日(土):中・財新サービス業PMI(9月)
10月9日(日)中国共産党・7中全会が開幕
予想レートは米ドル・円が140円前半から146円半ば。ユーロ・米ドルが0.94ドル前半から1.00ドル前半。
【米国】
為替(10月3日6時00分)
米ドル円(USDJPY) 144.71-144.79 (円)
ユーロ円(EURJPY) 141.83-141.93 (円)
ユーロ米ドル(EURUSD) 0.9800-0.9803 (米ドル)
ポンド円(GBPJPY) 161.54-161.73 (円)
ポンド米ドル(GBPUSD) 1.1164-1.1171 (米ドル)
9月30日のニューヨーク外国為替市場は、経済指標の相反する結果による影響や米金利の低下、日本の再介入への懸念から投資家心理が冷え込み、リスク回避の姿勢が強まっている。
金融政策の影響を受けやすい2年債と10年債(長期金利)の利回りは、62日連続で逆転(逆イールド)が続いている。終値ベースでは2年債が4.273%、10年債が3.829%だった。
また、朝方に発表された8月の米個人消費支出(PCE、前月比、結果:0.4%、予想:0.2%、前回:0.1%)では、予想を上回る伸びが見られた。8月の食品・エネルギー除くPCEコア価格指数(PCE、前月比、結果:0.6%、予想:0.5%、前回:0.1%)は予想を上回り、7月に比べ伸びが加速している。
加えて、FRBのブレイナード副議長は、講演で積極的な金融政策を後押しするタカ派的な発言を示した。ブレイナード副議長は、「金融環境引き締めの完全な効果が様々なセクターを通じて波及し、インフレを押し下げるまでには時間がかかる」と述べた。さらに「しばらくの間は景気抑制的な金融政策を維持し、インフレが目標に戻りつつあるという確信を得る必要がある。従って、われわれは時期尚早な政策巻き戻しを避けることにコミットしている」と示唆した。これらがプラスに作用している。
合わせて、9月ミシガン大学消費者信頼感指数確報値(結果:58.6、予想:59.5、前回:59.5)は、速報値から下方修正され4月以来の高水準となった。FRBがインフレ指標としている1年期待インフレ率確報値は4.7%と、予想外に速報値(4.6%)から上方修正された。その一方で、5-10年期待インフレ率確報値は2.7%と、速報値(2.8%)より下回った。9月シカゴ購買部協会景気指数(PMI、結果:45.7、予想:51.6、前回:52.2)では、活動縮小の50を下回っている。これらの結果から、米長期金利が3.74%から3.68%まで低下した。
米ドル・円(USDJPY)では、8月の米個人消費支出の良好な結果やブレイナード副議長のタカ派的な発言から、この日の高値144.81円を付けた。その後は、ミシガン大学消費者信頼感指数確報値やシカゴ購買部協会景気指数の弱い結果から小幅に値を下げたが、値を戻した。しかし、日本政府の再介入への警戒感から上昇145円手前で荒い値動きとなり終値は144.74円だった。
ユーロ・米ドル(EURUSD)では、欧州での地政学リスクや景気後退への懸念から、朝方にこの日の安値0.9735ドルを付けた。その後は反動から買い戻された上、月末の金の価格決めに関わるロンドンフィキシングに絡んだユーロ買いもあり終値は0.9802ドルとなった。
ユーロ・円(EURJPY)は、朝方はこの日の安値140.79円を付けていたが、安値圏が意識され買い戻された。ユーロ・米ドルでの上昇もプラスとなり、徐々に値を上げ141.88円で終えた。
株式
NYダウ平均 USD 28,725.51 -500.10(-1.71%)
NASDAQ総合 USD 10,757.619 -161.887 (-1.50%)
S&P500 USD 3,585.62 -54.85(-1.50%)
9月30日の米株式市場のダウ工業株30種平均は、連日で前日の終値を下回った。昼頃までは、前日に下げた反動から買い戻された。その後は、FRBの積極的な利上げによる景気後退懸念が強まり徐々に値を下げ、境目の29,000ドルを下回り年初来安値を更新し終えた。なお、29,000ドルを下回るのは約2年ぶりの低水準。
債券
米国債10年 3.829%(+0.082)
商品
NY原油(WTI) 1バレル=USD 79.49 -1.74(-2.14%)(11月渡し)
NY金(COMEX) 1オンス=USD 1,672.00 +3.40(+0.20%)(12月渡し)
【日本】依然、日本政府の介入懸念強く
為替(17時)
9月30日の東京外国為替市場では、月末の決済に向けた買いが入るも、日本政府の介入への懸念や時間外の米長期金利の低下から値が上がりづらい状況となった。
米ドル・円では、日本の執務時間開始と共に月末の決済に向けた買いが入り、この日の高値144.77円まで値を上げた。しかし、米長期金利の低下や日本政府の再介入が意識されると徐々に値を下げ、この日の安値144.26円を付けた。17時時点で144.30円だった。
ユーロ・米ドルは日本時間には大きな動きが出なかったが、欧州勢参加後にこの日の安値0.9791ドルまでユーロが売られた。その後はポンドが対ドルで買われたことで投資家心理が上向き、17時時点では0.9833ドルだった。
ユーロ・円は、朝方は月末の決済に向けたユーロ買いが入り、この日の高値142.29円まで上昇した。その後は、地政学リスクへの懸念から値を下げるも再び買戻しが入り、17時時点では141.91円で取引されている。
債券
国債先物・22年12月限 148.30 (+0.20)
10年長期金利 0.245%(-0.005)
【マーケットアナリティクス】GBPJPYは価格変動が大きく、方向性を模索中(9月30日)
GBPJPY(ポンド・円)は価格変動(ボラティリティ)が非常に高い状態で取引されたが、米国取引時間には、200日移動平均線(160.30※)の上でわずかに推移し、横ばいで推移した。
驚くべき英GDPレポート
マクロ経済では英国国家統計局(ONS)が、英国の第2四半期のGDPを発表した。前期比微減という予想に反し前期比微増となり、速報値の0.1%減からに0.2%増となった。
卸売・小売業だけでなく、健康産業も低迷を続けていることが注目された。しかし、サービス業は0.2%増と予想され、専門職、科学技術職、情報通信業の生産が「緩和」されたことが示された。
これに先立ち、ONSはパンデミックによる経済活動の減少により、サービス生産が0.4%減少したと示している。
インタラクティブインベスターのマーケット責任者であるリチャード・ハンターは、次のように述べている。「英国経済にとって非常に困難な1週間だったが、第2四半期のGDPが予想に反してプラスに転じ、景気後退の予想を覆し、珍しく希望の光が見えた。」
短期的な見通しは中立
英ポンドは現在、直近の安値である161付近の重要な上値抵抗線(レジスタンス)を試している。強気(ブル)筋がこのレベルを超えて価格を押し上げた場合、当面のトレンドは強気に変化し、投資家心理が改善する可能性がある。
その場合、次のターゲットであるレジスタンスは、今日の高値の162付近となる可能性がある。
下降局面では、160.30付近にある200日移動平均線(※)がサポートとなり、維持されない場合は、今日の安値である159.50付近まで下落する可能性もある。
(※)200日移動平均線:一定期間(この場合は200日間)の終値の平均値の推移を折れ線グラフで示したもの。相場が上昇傾向にあるのか、下落傾向にあるのかといったトレンドを把握しやすい。
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ポンド・円、デイリーチャート 9月30日(CET・中央ヨーロッパ時間)
引用元: “GBPJPY Stays Volatile, Looks For Direction” (2022年9月30日, AXIORY Global Market News)
追記:10月3日、日本時間6:00のポンド・円は161.54-161.73円で取引されている